📄 2025年5月OS研究会で研究成果を発表

FPGAによるカーネル内メモリ処理高速化

品川研究室の飯田圭祐さん(広域システム科学系修士課程2年)が、2025年5月に沖縄で開催された2025年5月OS研究発表会 (第167回システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究発表会)で研究成果を発表しました。

OSカーネルでは、プロセスの起動やページフォールト処理、コピーオンライト、NUMA最適化など、多くの場面で memset() や memcpy() といった基本的なメモリ操作が行われています。こうした処理は頻繁に実行されるうえ、CPUキャッシュの汚染や演算リソースの無駄遣いを招くため、システム全体の性能にも影響します。

本研究では、こうした基本的なメモリ操作をCPUから専用ハードウェアへオフロードすることで、性能と効率の向上を図る手法を提案しました。具体的には、DMAを利用して memset() や memcpy() を非同期に処理する「メモリ操作エンジン」を FPGA 上に実装し、Linux カーネルのページアロケータと連携させて、ゼロ初期化処理を非同期化しています。

この非同期化により、ページ確保時の初期化処理を省略可能となり、最大で約98%の処理時間削減を達成しました。提案手法はカーネル内部にとどまらず、今後はユーザ空間のメモリ操作への応用や、仮想マシン間通信、暗号・圧縮処理などへの拡張も視野に入れています。

OSの基盤的な処理に専用ハードウェアを組み合わせることで、これまでにない柔軟かつ高性能なメモリ管理の実現を目指す研究です。

品川 高廣
品川 高廣
教授

東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻教授